ウェルテルタウンでやすらかに

面白かった。

ウェルテル効果 - Wikipedia というのを使って町興しをしよう!っていう胡散臭いコンサルの企てを小説家である主人公が阻もうとする感じの話。

めちゃくちゃ単純にいうと主人公が他人の自殺を止めようとする話なんだけど、小説家だけじゃなくて主要登場人物のほとんどが自分の死をいつでも取り出せるところに置いてあるような人間たちで「他人の自殺を止める」という独善的なキモさが無いのも良かった。

結構淡々と話が進んで伏線を散りばめまくってる状況が続いて、言祝と生前の対決パートに入って一気に回収して話が進んでいくのが気持ちよかった。 Audible もあるので、というか Audible の方が先に出版(?)されたという珍しいやつなので Audible で聴くんでも良いかも。

西尾維新の作品」という情報以外なんも知らずに読んだら良かったので、もしこれから読もうという人がいたら以下は目に入れないで欲しい。


言祝は、話の題材的に死にたいもしくは過去に死にたいと思ったことがあるのかなと思わせる言動をしていて、そういう人がどういう動機と方法で計画を止めるんだろうと楽しみに読んだ。

作品の最初から言祝は自分のことを小説家としては正道ではないという感じの自認をしていたのが、餓鬼堂の自殺を止めるために「小説の力を信じて」餓鬼堂の遺書を執筆する展開が熱かった。それと最後にタイトルと、目次の意味が分かるのも大変に良かった。

毎日、特に楽しいわけではなく日々のゲーム・アニメ・漫画・小説などいろいろな創作物に生かされているような状態なんだけど、そういう自分では恥ずかしいなあと思っている生き方を作品を通して肯定してもらったように感じた。まさか西尾維新の作品でぼろっぼろ泣くとは思わなかった。

「願わくは、死んでもいいけど生きててもいいんだと、知らない人のために朗読できる歌声であれますように。」

—『ウェルテルタウンでやすらかに』西尾維新https://a.co/5s6oFLU